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上手の横嫌い [思考実験]

みなさんの周りにも、
「上手いから好きなんだよ」
「下手だから嫌いなんだよ」
と言う人がいると思います。
どう思いますか?

高校生の頃、将棋が得意な級友が、私を将棋に誘うことがありました。
「オレ、将棋は好きじゃないんだよ」
と断ると、彼は、
「強くないから好きじゃないんだろ?」
「強かったら好きなはずだよ」
と言ったのです。
これには穏やかな私もさすがにカチンと来ました。
「じゃあ、おまえはピアノが弾けないからクラシック音楽が好きじゃないんだよ」
と言ってやりたくなりました。

ケンカが強くても平和主義者の人はたくさんいます。
「戦わないのは弱いからだ」
と言う好戦的な人がどれだけ平和を乱しているか。

私に限らず、物事は大抵、好きだから(自然と努力をして)上達します。〔好きこそものの上手なれ〕
嫌いだから(努力が苦痛ゆえ)上達しません。
ただし、これらは、相乗効果もあるので、どちらが先なのかという因果関係はハッキリしません。
ともあれ、「好き=上手い」「嫌い=下手」という対応関係が成り立つように思われます。
しかし、すべての人に当てはまるかというとそうでもない、ということは、みなさんもすぐ思いつくと思います。
そうです、「下手だけれども好きだ」〔下手の横好き〕が結構いるということです。
では、それを含めると、「好き⊃上手い」「嫌い⊂下手」という包含関係が成り立ちそうです。
でも、ここまでだったら、将棋でも歌でも「嫌いだ」という人に限って言えば、
「下手だから嫌いなんだ」(上手いから好きなんだ)
という因果関係はなんとか成り立ってしまいます。
このままなら、高校時代の自信家の級友を論駁できません。

残るは、「上手いけれども嫌いだ」という人が果たしているのかということになります。(この手の人を私は勝手に『上手の横嫌い』と呼びます)
結論から言うと、います。

以前、ある雑誌を読んでいたら、往年の欧米のテニスプレーヤーの集会の記事が目に留まりました。
そこにはC選手やM選手などが、引退後も集まってテニスを楽しむ様子が描かれていました。
しかし、取材人は、B選手がいないことに気付いたのです。
「なぜ、B選手はいないんですか?」
と尋ねたところ、Cは、
「だって、やつ、テニス好きじゃないもん」
とあっさり。
取材人は、
「じゃあ、どうしてテニスをやって、世界一にまでなったんですか?」
と尋ねると、
「やつは、勝つことが好きなんだ」
つまり、テニスは勝つための手段にすぎなかったらしいのです。
それにしても、好きでなくても他に動機があれば一流になれるというのは、大した集中力ですね。
他にも、ある国の代表選手でありながら、「仕事ですから(趣味ではない)」とキッパリ言う人がたまにいます。

実は、事の発端は、またまた隣に座る「物理学博士」が、はじめの台詞を吐いたことにあり、向かいに座る数学の先生が、
「いや、そうとも限らないよ」
と反論して、話が発展したのです。
「プロ歌手のM(超大物)なんか、歌が好きじゃないんだってよ」
おそらく、グループの中で適当に上手いからということで、ボーカルを受け持ったところ、売れてしまったのでやめられなくなったのでしょう。

スケールは小さいのですが、私は数学教師をしていますから適当には出来ますが数学は好きではありません。
なので、仕事以外では決して数学をやりません。
高校時代、むしろ教わっている数学に納得がいかなかったから究明しようと志したところ、好きではない数学を教えるという皮肉な結果となりました。

長くなりましたが、「嫌い(好きではない)」理由がけっして「下手だから」ということが成り立たないということ、すなわち、「上手くても嫌い(好きではない)」ということがたくさんあるということです。
言い換えれば、「好き」と「上手」(「嫌い」と「下手」)は、包含関係ではないということです。
まあ、私の造語『上手の横嫌い』は流行りそうもないですね。


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